犬として生まれた俺の一生。(続き)
※前回豆太君が怪我をしてしまってから、
またサクラちゃんが散歩に連れてってくれるようになった。
俺が袋小路家へきた頃、サクラちゃんとは毎日一緒だった。
遊ぶのも寝るのも一緒。お風呂も一緒♥いつでも一緒。
サクラちゃんとの散歩は久しぶりだ。
が…はじめの1週間は毎日だったが、それ以降、2日に1回、3日に1回と…
1ヶ月経った今は週に1回だけになってしまった。
しょうがない。きっと忙しいんです。色々あるんです。
サクラちゃんは塾とか部活とかあるしね…。お友達もたくさんいるし。
豆太君は無事に退院したものの、まだ怪我が完治していない。
家の中では俺と遊んでくれるけど、前のように散歩に行く事はなくなった。
俺はもう子犬ではない。成犬だ。
あの頃と今ではいろんな事が変わってしまったのだ。
いつものように玄関先で寛いでいると、
リビングから、またお父さんとお母さんの会話が聞こえてきた。
母「お父さん、ご飯ですよー。」
父「ん?あれ?サクラは?」
母「今日は塾よ。帰りに友達とご飯食べてくるって言ってたわ。」
父「ふーん、そうか…。豆太は?」
母「豆太も今日はお友達の家に行ってるわよ。どうしたのよ?」
父「いやぁ、たまには皆揃ってご飯が食べたいなぁと思ってさ。」
母「ふふ。お父さん、しょうがないんじゃない?豆太だってそのうち反抗期になって、
サクラと同じようになるのよ。親なんかより友達なんだから今は。」
父「そんなもんかねぇ…。今日は母さんと2人だけか。」
母「あら、みかんがいるじゃない?」
父「ああ、そうだな。3人だったな。」
母「ふふ♥もう1人作りましょうか?♥」
父「今日は寝れなそうだなぁ〜♥」
お父さんは最近、俺にかまってくれる。
きっと寂しいのだろう。
お父さんに限らず袋小路家の皆は、寂しくなると俺を撫でてくれる。
そして、俺に悩みを打ち明けてくる。
俺にはどうする事もできないが、
皆が大好きだから、力いっぱい、しっぽを振る。
そして満面の「ハア♥ハア♥」で応援する。
それから3年。俺は6才になった。
サクラちゃんは17才。高校2年生。女子高生。立派なJKです。
サクラちゃんは月に1回くらい、近くの公園に連れていってくれるけど、
ベンチに座ったまま俺とはあまり遊んでくれない。
サクラちゃんに必死に訴えるが…反応無し。携帯いじったままです。
分かってます。分かってますよ。友達やら彼氏やらバイトやらで忙しいんです。
青春真っ盛りですからね。だってJKですから!
とある日。恒例の月1散歩に連れて行ってもらった時でした。
サクラちゃん、俺を急に抱きしめ泣きだした。失恋だろうか?友達とケンカだろうか?
心配になった俺は尋常じゃない「ハア♥ハア♥」で一生懸命慰める。
腰を前後にフリまくる。ギンギンにしながら、力いっぱい突き上げる!!
サクラ「みかん…。あたしね、フラれちゃったぁ…泣」
俺「ハア??…ハア♥ハア♥…くう〜ん♥」
サクラ「一緒に泣いてくれるの?…優しい子ね、みかんは…泣」
俺「ハアァァァ〜♥」
ギュっと俺を抱きしめてくれるサクラちゃん。
子犬の頃を思い出すぜ!
ぷっくり膨らんだ胸に顔をうずめる俺。
ああ、なんていい香り♥
夕日に映るJKとギンギンの犬。なんてファンタジー。
それからしばらくの間、サクラちゃんは毎日俺を散歩に連れていき、
公園でいろんなお話をしてくれた。
それから1年、楽しい高校生活も終わり、
サクラちゃんはとある出版会社に就職が決まり、上京する事になった。
とっっっっっっっっても寂しい俺。
旅立つ前日にいつもの公園に連れてってくれた。
そして、またいろんな話をしてくれた。
新しくできた彼氏に上京する事を話したら、反対されて別れてしまった事。
お別れ会を友達が開いてくれて感動して涙した事。
豆太君に彼女ができた事。働き過ぎのお父さんの体が心配な事。
お母さんの白髪が増えてきた事。
こないだ、お父さんとお母さんが合体してるとこを見てしまった事…等々。
サクラ「みかん。あたしね、お仕事で遠くに行かなきゃいけなくなったの。」
俺「…??…」
サクラ「いい子にしてなさいね。お母さんとお父さんと豆太をよろしくね。」
俺「ハアァァァ〜♥」
荷物をまとめて家を出るさくらちゃんを切ない「ハア♥ハア♥」で見送る。
ちょっと寂しいが…今のサクラちゃんは希望に満ちあふれている。
サクラちゃん、俺に目一杯のハグをする。
そして、いなくなった。
サクラちゃんとの最初の別れだった。
月日は流れ、
豆太君は高校卒業後、専門学校に通うため1人暮らしを始めた。
家にはお父さんとお母さんと俺の2人+1匹暮らし。
サクラちゃんが上京して、もう丸2年が経っていた。
社会人ってのは大変らしく、年に数回だけ家に帰ってきては愚痴をこぼしていた。
上司がケツを触ってくるとか、その気がないのに同僚に迫られてるとか。
どうやらサクラちゃんは職場でモテモテらしい。
で、俺はもう10才。人間でいうと70才くらいかな?もう御老体です。
足腰も弱まり、目も悪くなり、白内障を患っていた。犬の更年期障害だ。
散歩も週に2、3回で十分です。
でも袋小路家に対する愛情は変わっていない。
だって犬だもの。
しかし…最近やたらダルい。
食欲もあまりない。
そろそろでしょうか?
(続く)